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長野地方裁判所諏訪支部 昭和46年(ワ)39号 判決 1973年5月31日

原告

山崎智子

右訴訟代理人

渡辺泰彦

外二名

被告

株式会社上原製作所

右代表者

上原嘉造

右訴訟代理人

久保田嘉信

主文

原告は、被告に対し本採用従業員として雇用契約にもとづく権利を有することを確認する。

被告は、原告に対し昭和四七年三月二一日から本裁判の確定に至るまで一か月一、九五〇円の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は三分し、その二を被告の、その余を原告の負担とする。

この判決は、第二項に限り、仮りに執行することができる。

事実《省略》

理由

原告は、昭和四五年一〇月一六日被告の従業員として採用され、被告の就業規則の定めに則り、同日から三か月の試用期間を置かれたことは、当事者間に争いがない。

第一、一そこで、先ず、右試用契約の法的性質について検討するのに、<証拠>によれば、被告の就業規則は「従業員に採用された者は、三か月の試用期間を置く。試用期間中に従業員として不適当と認めた場合には採用を取消すことがある。」旨規定していること、被告会社には試用期間中の従業員に対し本採用になるための条件として、予め一定の合理的かつ客観的な労働能力に関する適格基準を定めた規定も試用期間を経て本採用となるについて本採用試験あるいは特段の適格検査等の措置を講ずる旨の規定も存しないこと、被告会社における試用期間は、従業員を予定した職務に就かせたうえ本採用の従業員として労働能力と適格性を有するか否かを判定し、その結果によつてこれを解雇することができるという機能を営むものであることを認めることができ、右認定に反する証拠はない。

以上の事実を総合すれば、右試用契約の法的性質は、従業員(試用者)として採用されることによつて当初から期間の定めのない雇用契約が成立するが、被告は、試用期間内では従業員に不適格な事由があれば解雇することができるという解雇権を留保している契約というべく、従業員が右不適格の事由を具備せず、またはこれを具備しても解雇権を行使されない限り、試用期間の経過によつて当然本採用の従業員の地位を取得するものと解するのが相当である。

二次に右試用期間の延長の適否について判断するのに、試用期間の法的性質は、前叙のとおりであるから試用期間中の従業員の地位は不安定であるというべく、また、当初の試用期間そのものが従業員に対する労働能力と適格性の価値判断を行なううえに必要な合理的期間内に限られるというその本旨からくる制約に服する以上、試用期間の延長の適否は、従業員を不安定な地位に置くことを継続させるものであるからなお一層厳格に解されるべきであろう。

<証拠>によれば、被告の就業規則中には「三か月間の試用期間は人物判定の都合上延長することがある。」旨の規定が存することを認めることができるが、ここに延長することがあるとは、右延長の許否を被告の一方的、恣意的判断に委ねる趣旨ではなく、それは、試用契約を締結した際に予見しえなかつたような事情により適格性等の判断が適正になしえないという場合のごとく延長を必要とする合理的事由がなければ許されないことを意味すると解すべきである。

(一)  本件について右延長を必要とする合理的理由の有無をみるのに、原告には、被告が主張(第四、一の(二))するとおり、昭和四一年三月から昭和四五年九月までの間に前後五社にわたり勤務していた前歴があるのに、そのうちの三社にかかる前歴を入社にあたり提出した書類に記載しなかつたという前歴詐称があつたことは、当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、原告に右前歴詐称があることは、被告の調査によつて当初の試用期間の満了する直前に至つてはじめて判明したこと、右記載のない三社のうち三協光学工業株式会社の場合は、無断欠勤を理由として、原電機株式会社の場合は、総合的判断による不適格を理由としてそれぞれ解雇されていること、被告としては、本件前歴詐称のみで原告を解雇することも可能であると考えたが、被告がその挙に出ず試用期間の延長を決定したのは、短期間に転々と職を変えていることが今後の労働能力の評価および被告の労働力の組織づけに具体的影響を及ぼさないか、右前歴詐称によつてそこなわれた被告の信頼関係を回復し保持することができるか否かの具体的観察と判断をしなければならないあらたな必要に迫られたこと、加えて延長期間中に原告が職務に励み、その勤務態度によつて右前歴詐称によつてもたらされた右危惧が具体的に治癒されるならば、本採用にしようとの配慮によるものであること、そして被告は、試用期間を昭和四六年四月三〇日まで延長することに決定したことを認めることができ、右認定に反する証拠はない。

右事実によれば、被告が当初の試用期間を右のとおり延長することに決定したことは、合理的理由にもとづくものというべきである。

(二)  被告は、原告の試用期間を右のとおり延長する旨の意思表示を試用期間満了までに原告に対し告知しなかつたことは、当事者間に争いがない。

被告は、被告会社における運用によれば、試用期間三か月を経過するにあたり、本採用にする旨の意思表示のない限り、たとえ試用期間を延長する旨の意思表示がなくても、当然試用期間が三か月間延長(更新)されることになつている旨主張するので、右期間延長の意思表示の告知の要否について判断するのに、試用期間の延長は、従業員を不安定な地位に置くことを継続するものであるから厳格に解されなければならないことに徴してその延長する旨の意思表示の告知の要否も右観点から同様に厳格に解するのが相当であるところ、<証拠>によれば、被告の就業規則等には「試用期間満了日において期間延長の意思表示のなされない場合は、同一条件の試用が継続するものとする。」旨の規定の存しないことを認めることができる。

このように就業規則等にも明規されていない被告の主張するごとき従業員(試用員)にとつて極めて不利益な取扱を有効であるとして是認するならば、従業員の権利は、甚だしく侵害されることになり、被告の一方的措置を許すことになるので、被告の主張にかかる前記運用方法は、<証拠>により明らかなとおり本採用者と試用者につき同一の就業規則で規定している被告会社にあつては、従業員の利益を明確にし、その権利を確定するという観点から就業規則の記載事項を定めている労働基準法八九条一項一〇号の趣旨に則り、就業規則等にその旨明規されるべき性質のものであると解するのが相当である。かかる見地から就業規則等に「試用期間満了日において期間延長の意思表示のなされない場合は、同一条件の試用が継続するものとする。」旨明規されていて、試用期間延長の意思表示の告知に関し労使間でその旨円満に合意されている場合は格別(もつとも右のごとくその旨明規されている場合であつても、その延長される期間等その規定内容いかんによつては、解雇保護規定の脱法行為ないしは公序良俗違反の観点から慎重な検討を要する場合もあろう。)その旨の規定を欠く場合には試用期間の延長の意思表示の告知を要するということは当然の前提とされているというべく、したがつて、前叙のごとき被告における試用期間を延長する旨の決定は、いまだ被告会社の内部的決定すなわち被告会社における内部的意思表示の存在を意味するにすぎないから、これを当該従業員に告知しなければ外部的に成立し、有効なものとはならないと解すべきである。

もつとも、被告は、前記のような被告の運用は、長年にわたるものであると主張するが、このような就業規則等に規定されていない従業員にとつて不利益な措置を慣行によるものとして有効と解すことはできないのみならず、<証拠>によれば、なるほど被告会社にあつては、本採用の意思表示がなされない限り、たとえ右延長の意思表示のなされない場合でも期間が延長されたものとして取扱われて来た事例の多いことは、これを認めることができるが、他方右延長の意思表示のなされている事例の存することも認めることができるのであり、このように被告による告知したり、告知しなかつたりの恣意的で一方的な右両事例が存するのであるから、被告主張のごとき運用がなされているからといつて、それをもつて直ちに、被告の労使間における暗黙の集団的合意にもとづく慣行が存在するともいえず、また、右延長の意思表示を告知しない事例の中で被告の措置をとらえて異議を申立てたり、ことさら問題とする従業員がいなかつたとしても当該従業員は、試用期間中の不安定な地位にあり、かつ非組合員であることを思い合わせれば、右告知を受けない者がことさらこれに異議を申立てなかつたとの一事をもつて被告主張の運用が規範意識に支えられたいわば不文の協約ないし規則にもとづくものとも断ずることはできないのであり、現実に原告自身も右告知なしに期間が延長される措置を慣行にもとづく正当なものとして受け入れていたとの証拠はない。

ましてや前掲各証拠によれば、被告会社においては、試用期間を延長する場合は期限を定めずに延長しておいて、その間各人の能力や適格性に応じて適当とする期間内に本採用にしている場合と一応期間を定めて延長している場合とがあることを認めることができ、また、延長の意思表示の告知についてもこれを告知している場合と告知していない場合とがあることは前叙のとおりであつて、延長期間および延長告知に関するこの取扱は、恣意的でまちまちである以上、被告の場合は、なお一層強い理由をもつて右延長の意思表示を原告に対して告知しなければならないという実質的必要が存するといわなければならない。もつとも、試用期間を延長したのは、もつぱら原告の前歴詐称にもとづくものではあるが、それは、試用期間の延長を認める合理的理由に十分値いしても、それ以上に延長の告知を不要ならしめる正当な理由とはならないと解すべきである。

以上述べたところから明らかなとおり、被告のこの点に関する主張は理由がなく、原告は、当初の試用期間を満了するにあたり、右期間を延長する旨の意思表示はもとより解雇する旨の意思表示も受けなかつたことは明らかであるから、右期間を満了した翌日である昭和四六年一月一六日本採用の従業員の地位を取得したと解すべきである。

三ちなみに、試用期間延長の意思表示の瑕疵を云々しなくとも、原告は、次の理由によりいずれにしても本採用の従業員の地位を取得したというべきである。すなわち、

被告が第一回目の延長期間の満了前原告に対しさらに試用期間を期限を定めずに延長する旨の意思表示をしたことは、当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、その理由は、

(一)  原告には、右期間中の昭和四六年三月九日自己の勤務場所である警備室においてストーブの火の不始末をしたこと、そのころ就業時間中にプラカードを警備室に持ち込んだこと、就業時間中に警備室において外来者にチヨコレートを渡す私事をしたこと等の事由があつたとして、それが職場規律違反にあたるとされたこと、

(二)  原告は、右事由を認めて任意に三月一二日付で三通の始末書を提出しながらその翌日に至つて自己の非を反省することなく右始末書の撤回を申出たこと、

(三)  被告会社の正門前で許可なくビラを配布し、被告の得意先等の対外的信用を害したこと、

(四)  以上の事実は、被告としては本件前歴詐称と相まつて解雇事由に該当すると判断したが、第一回目の延長の際と同様の趣旨と配慮のもとにさらに試用期間を期限を定めずに延長する

ということにあることを認めることができ、右認定に反する証拠はない。

そこで按ずるのに、たとえ原告に被告が第二回目の延長の理由とした右(一)ないし(三)の事由が存在し、それが被告が評価したとおり解雇の事由に該当するものであるとしても、それは、昭和四六年四月三〇日満了する試用期間をさらに相当な期間延長することを認める合理的理由になり得るとしても、期限を定めずに期間を延長する理由とはなりえず、期限を定めずになす試用期間の延長は、畢竟何回にもわたる延長を認めることにひとしく、解雇保護規定の趣旨から到底許されないところであり、右期限を定めずになされた延長は、相当な期間を超える限度において無効というべきである。

そこで、右相当な期間を検討するのに、被告が主張する右(一)ないし(三)のごとき事由がすべて存在することを前提としても、その期間は、就業規則に定められた当初の試用期間三か月間を限度とみるのが相当である。

したがつて、被告のなした期限を定めずになした延長は、第一回の延長期間が満了する昭和四六年四月三〇日から三か月を超える限度において無効というべく、また、右三か月間の満了日である同年七月三一日までに解雇の意思表示等なんらの意思表示がなされなかつたことは明らかであるから、原告は、遅くとも右期間の経過とともに同年八月一日本採用の従業員の地位を取得したというべきである。(なお、本訴の提起されたのは同年九月一日である。)

第二以上のとおり原告は、昭和四六年一月一六日本採用の従業員の地位を取得したので、これを前提とする適正給料および賞与の額について順次検討する。(なお、本採用従業員の地位取得時期を昭和四六年八月一日とみても、右各金員の適正認定額には後記するところから明らかなように、差異は生じない。)

一、(一) 原告の昭和四六年四月分からの適正給料について検討するのに、<証拠>によれば、昭和四六年度の賃上げに関する協定によつて同年四月(同年三月二一日から同年四月二〇日まで)から一人あたり平均七、四三〇円の賃上げがなされるが、右協定は「その対象者は、昭和四六年三月二〇日現在の本採用従業員とする。」と規定する一方「昭和四五年三月二一日以降の中途入社者は、別途基準による。」とも規定しており、右規定そのものからは右賃上げの適用対象者の範囲が必らずしも明確とはいえないが、他方昭和四七年度の賃上げに関する協定によれば、この協定の適用をける対象者は、昨年度(昭和四六年度)と同様の趣旨にもとづく基準による旨規定し、それは「昭和四七年三月二〇日現在の本採用従業員で昭和四六年三月二〇日以前に入社した者(すなわち、一年経過を意味する)」であると具体的に規定しており、したがつて、右両年度の各協定の規定を統一的に解釈すれば、昭和四六年度の右協定の適用を受ける者とは、同年三月二〇日現在の本採用従業員であつて、かつ昭和四五年三月二〇日以前に従業員として採用されたもの、すなわち試用期間を含めても昭和四六年三月二〇日までに少くとも一年以上にわたり勤務している者を指すことは明らかであり、被告においても昭和四六年度の右協定の適用対象者を右同様に解釈して賃上げを実施しているが、これは、もとより正当として是認できるので、原告は、前叙のとおり昭和四六年一月一六日本採用の従業員の地位を取得しても昭和四五年一〇月一六日の中途入社者であるから右要件をみたさず、昭和四六年度の賃上げに関する協定の適用を受けることはできず、右協定にいう別途基準により計算されることとなるところ、原告は、別途基準により計算された結果三万五、〇〇〇円に昇給したことを認めることができ、右認定を覆すに足りる適確な証拠はなく、別途基準により算出された右三万五、〇〇〇円の数値が妥当を欠くことの証拠もない。

したがつて、原告の昭和四六年四月分からの給料は、三万五、〇〇〇円が相当であるというべく、この点に関する原告の請求は理由がない。

(二) 次に原告の昭和四七年四月分からの適正給料について検討するのに、被告が原告の同年四月分からの賃上げ額を四、二五〇円としたのことは、当事者間に争いがないが、これは原告が本採用の従業員でないことを前提として別途基準により算出されたものであるから妥当でないことは明らかであるところ、<証拠>によれば、原告は、同年度の賃上げに関する協定の適用対象者となること、この対象者は、一人あたり平均七、八〇〇円(但し、基本給と諸手当を加えたもの。)の賃上げを受けることになるが、そのうち基本給の賃上げに関しては、その者の少くとも一年間にわたる総合的評価に応じてその具体的配分額が決定されることを認めることができ、右認定に反する証拠はない。

ここで、原告の右総合的評価について考えると、原告は、無断欠勤および総合的判断による不適格を理由として解雇された二社を含む三社の前歴詐称を犯したため、被告により爾後の様子を観察されている者であることは前認定のとおりであるところ、<証拠>によれば、(イ)原告は、昭和四六年二月二四日被告に差し出した内容証明郵便の中において、右前歴詐称を犯しておきながら、憲法三八条が何人も自己に不利益な供述を強要されないことを保障しているからという本件の場合には全く適切を欠く理由をもつて右詐称を正当化しようとしていること、(ロ)昭和四六年三月一日ころから被告会社正門前で就業時間前に他の従業員に試用期間延長、職場配置換の不当を訴え、あわせて支援を求めるビラを配布していたが、そのビラの中において、自己の前歴詐称は、履歴書に三協光学工業株式会社に三か月間勤務していたことを記載しなかつたということのみであると主張して他の二社の前歴詐称のあることを省き、あたかも前歴詐称が一社にすぎず、さして重大な詐称でないということを暗に示してこれを正当化しようとしていること、(ハ)就業時間中に原告を尋ねた外来者(その後原告の夫となつた者)に二回ほどチョコレートを渡す私事をしたこと、被告会社の前でプラカードを掲げ持つていたこと、就業時間中にプラカードを勤務場所に持ち込んだことがあり、原告は、一旦これを非と認めて同年三月一二日始末書を提出したところ、翌日に至り右始末書の撤回を申出て右陳謝をひるがえしたこと、(ニ)同年二月下旬ころから警備係となり受付の仕事に従事しているが、来客に対する応接態度、他の従業員の出入りの状況等の確認把握が必らずしも良好といえないことを認めることができ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

右事実は、原告が対人的信頼関係を基調とする雇用契約締結の際無断欠勤等を理由として解雇された二社を含む三社の前歴を秘匿してその不信義性を示し、被告の信頼ををそこなつたことと相まてば、原告に被告の本採用従業員としての協調性、適格性に大いに欠ける点があることを表わしているというべきである。

この総合的評価に従い、原告の昭和四七年四月分からの適正賃上げ額について検討を進めると、前掲各証拠によれば、前記平均賃上げ額七、八〇〇円の内訳は、基本給五、六五〇円(このことは、当事者間に争いがない。)、諸手当二、一五〇円であり、基本給については、総合的評価に応じて九〇パーセントの者が四、〇〇〇円以上になるように具体的配分が決定されるように定められている一方、原告の同年四月分からの昇給額四、二五〇円の内訳は、基本給四、〇五〇円、職能手当二〇〇円であることを認めることができ、右事実と原告の右総合的評価を総合して考えれば、原告の同年度の基本給に関する賃上げ額は、被告が別途基準を前提として算出した右四、〇五〇円程度でもあながち不当といえず、また諸手当については、右協定による平均額二、一五〇円以外の数値を適正と認めるべき証拠はないから、結局右四、〇五〇円と二、一五〇円を加えた六、二〇〇円が原告の昭和四七年四月分(同年三月二一日から同年四月二〇日まで)の適正賃上げ額というべく、したがつて、従来の給料三万五、〇〇〇円(このことは、当事者間に争いがない。)に右賃上げ分六、二〇〇円を加算した四万一、二〇〇円が同年四月分からの適正給料となる。

そして、原告が同年四月分から三万九、二五〇円の給料を支給されていることは、当事者間に争いがないから、原告のこの点に関する請求は、同月分より一か月あたりその差額一、九五〇円を請求する限度において理由がある。

二、原告の昭和四六年度夏期および年末ならびに昭和四七年夏期賞与の適正額について検討する。

原告の右各賞与を求める算式は、

であること、昭和四六年度夏期における妥結月数は2.61、稼働日数一四四日、出勤日数は一三九日、同年度年度末における妥結月数は2.2、稼働日数は一四九日、出勤日数は一四三日、昭和四七年夏期における妥結月数は2.465、稼働日数は一四三日、出勤日数は一三〇日であることは、すべて当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、原告の昭和四六年度夏期および年末における基本給は三万〇、七〇〇円であることを認めることができ、昭和四七年度夏期におけるそれは、右三万〇、七〇〇円に前認定の基本給に関する適正賃上げ分四、〇五〇円を加算した三万四、七五〇円であることは明らかである。

また、<証拠>によれば、被告は、原告の右各賞与について前記算式に次のとおりの数値を計上して算出していることを認めることができる。すなわち、

昭和四六年度夏期

同年度年末

昭和四七年度夏期

右事実によれば、被告は、原告の各賞与において人事考課上マイナスの数値をあげているが、前記認定にかかる原告の総合的評価に従えば、被告の右数値をもつて直ちに不当とすることはできない。

したがつて、右各賞与について被告の算出した右各金額をもつて相当とすべく、原告が右各金額の賞与の支給を受けたことは、当事者間に争いがないから原告のこの点に関する請求は理由がない。

よつて、原告の本訴請求のうち、原告が本採用の従業員として雇用契約にもとづく権利を有することの確認を求める部分は、これを正当として認容し、金員の支払いを求める部分は、昭和四七年四月分の給料の起算日である同年三月二一日から本裁判の確定に至るまで一か月一、九五〇円の割合による金員の支払いを求める限度において理由があるのでこれを認容し、その余の部分は、失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九二条、八九条、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。 (竹田穣)

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